夏場の気温上昇にともない、全国の熱中症による救急搬送は1週間で1万2,000件以上(2024年7月29日〜8月4日)にのぼります。そのうちの約6割は65歳以上の高齢者で、約4割の方が自宅にいながら熱中症に陥っています。
総務消防庁 熱中症による救急搬送人員(7月29日〜8月4日速報値)
熱中症の症状のひとつに「脱水」があり、高齢者の健康管理において、脱水は見過ごしがちな重大なリスクです。加齢に伴い、体内の水分バランスが崩れやすくなり、気づかないうちに脱水が進行することがあります。
そこで今回は、以下の内容について解説します。
- 高齢者の脱水の原因
- 症状
- 予防法
- 訪問看護での対応
ご家族やケアマネジャーの方々に、高齢者の脱水対策の重要性をお伝えし、適切なケアにつなげていただければ幸いです。
なお、多摩センター訪問看護には、さまざまな資格保持者が在籍しているため、ご利用者の状態に応じたより充実したケアを提供いたします。まずはお気軽にご相談ください。
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脱水とは
脱水とは、体内の水分が不足した状態を指します。人体の約60%は水分で構成されており、この水分バランスが崩れると様々な健康問題を引き起こします。
高齢者は特に脱水のリスクが高く、軽度の脱水でも日常生活に支障をきたしたり、重症化すると生命の危険さえあります。水分は体温調節や老廃物の排出など、生命維持に欠かせない役割を果たしているため、適切な水分補給が非常に重要です。
高齢者が脱水を起こしやすい原因
高齢者が脱水を起こしやすい原因には、いくつかの要因があります。
- 体内の水分量が減少する
- 尿を濃縮する能力が低下する
- 自力で水分を摂取することが困難になる
加齢に伴い体内の水分量が減少すると、のどの渇きを感じにくくなります。また、腎機能の低下により尿を濃縮する能力が低下し、水分が体外に排出されやすくなります。さらに、認知症や運動機能の低下により、自力で水分を摂取することが困難になる場合もあります。
薬の副作用で尿量が増えたり、発熱や下痢などの症状がある場合も脱水のリスクが高まります。加えて、高齢者は暑さや寒さを感じにくくなるため、気温の変化に対して適切な水分補給ができないことも原因の一つです。
高齢者が脱水を起こしているときのサイン
高齢者が脱水を起こしているときは、以下のようなサインがでています。
- 口の中が乾燥し、唾液の粘性が増す
- 皮膚の弾力が低下し、つまんでも戻りが遅い
- 尿の量が減少し、色が濃くなる
- めまいや立ちくらみがある
- 疲労感や倦怠感が強くなる
- 認知機能の低下や混乱が見られる
訪問看護の看護師は、利用者へ訪問した際に上記のサインが出ていないかを観察します。これらの症状が見られた場合、脱水の可能性を考慮し、早急に対応することが重要です。
脱水が起きたときの応急処置
高齢者に脱水の症状が見られた場合、以下の応急処置を行います。
水分補給 | 水やお茶、スポーツドリンクなどを少しずつ頻繁に飲ませます。一度に大量の水分を摂取すると胃腸に負担がかかるため注意が必要です。 |
涼しい環境への移動 | 暑さが原因の場合、エアコンの効いた部屋や日陰など、涼しい場所に移動させます。 |
体を冷やす | 首や脇の下、足の付け根など、太い血管が通っている部分を冷やします。 |
塩分補給 | 水分だけでなく、適度な塩分も摂取することで、体内の電解質バランスを整えます。 |
安静にする | 体力の消耗を防ぐため、横になって安静にします。 |
脱水のサインがある際は、焦らずに対応できるようシミュレーションしておくことも有効です。また、症状が改善しない場合や意識が朦朧としている場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
高齢者の脱水予防
高齢者の脱水を予防するためには、以下の点に注意が必要です。
- 定期的な水分摂取:のどが渇く前に、こまめに水分を摂取する習慣をつける
- 食事からの水分補給:スープや果物など、水分を多く含む食品を積極的に摂取する
- 室温管理:エアコンや扇風機を活用し、適切な室温を保つ
- 服装の工夫:季節に応じた適切な服装で、体温調節を行う
- 運動と休息のバランス:適度な運動を心がけつつ、十分な休息も取る
- 服薬管理:利尿作用のある薬を服用している場合は医師や看護師に相談する
これらの予防策を日常生活に取り入れることで、脱水のリスクを減らせる可能性が高まります。
訪問看護での脱水への対応
訪問看護では、訪問時に脱水の兆候がないか観察することも役割のひとつです。別の目的での訪問介護であっても、利用者の水分摂取状況や脱水のサインをチェックします。
また、適切な水分摂取方法や環境調整についてアドバイスを行い、家族やケアマネジャーと連携して継続的なケアを提供します。必要に応じて補水や点滴などの医療処置も行い、脱水の重症化を防ぎます。
訪問看護は、高齢者の健康状態を総合的に管理し、安心して在宅生活を送るためのサポートを提供します。
高齢者の脱水予防と対策には、専門的な知識と経験が不可欠です。また、訪問看護には、利用目的にかかわらず、訪問時の臨機応変な対応が求められます。
なお、多摩センター訪問看護には、急性期病棟や救急外来での勤務経験のある看護師が複数名在籍しています。臨機応変な対応が可能なため、利用者の状態に応じたより充実したケアを提供いたします。まずはお気軽にご相談ください。
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執筆:さとひろ